キャンプチェア考

キャンプを本格的に始めてまだ1年。が、何事もハマると止まらない性格なのでデイキャンプやBBQレベルの小さなものまで入れればすでに数十回の経験を積んだ。知識レベルと情熱では10年クラスのキャンパーにも負けてない(つもり)。道具も仕事に支障が出るほど吟味して集中して買い揃えた。しかし一点だけ選び切れずに買いそびれていたものがある。キャンプチェアだ。座るという行為はキャンプに限らず、普段の生活を見渡してみるとわかりやすいのだが、たとえばカフェでも、仕事をしているときでも、食事のときでも、リビングでくつろいでいるときでも、生活のほとんどは「座っている」と言っても過言ではないほど頻繁な行為なのである。それゆえにキャンプでも椅子はとても重要で、いつでもその中心に存在する。他の道具であれば、一緒に行く人の恩恵にあずかればいいが、椅子だけは自分専用のものを用意したいところだ。僕のモノ選びの最もわかりやすい公式は「みんなが知らない、もしくは気づいていない王道を探す」こと。実のところキャンプチェアの王道はとても簡単に導き出せた。カーミットチェアという木製のそれはそれは美しい椅子。オンラインショップでポチッとボタンを押せば済む話となるのだが、ちょっと待てよ、この王道はみんなが知っている王道だぞ、、、だったらそれはキャンプ道具選びの最終章に入ってからでもいいのではないかという神のお告げを感じ、そんなことを考えて1年間決め倦む結果となってしまった。 


そして遂に先日、これだ!という椅子に巡り合うことができた。その椅子は軽量なアルミパイプのフレームと座面は600Dポリエステルの丈夫なファブリックを組み合わせるシンプルな構造。アルミパイプが描くラインが幾何学的でとても美しい。この椅子の最大利点は計算された高さにあり、座り心地の良い座面構造を確保しながら、立ち上がりやすさと前かがみになっての焚火いじりを考えた究極の38cm。これが実に完璧で調子がいい。もちろん折り畳み可能で専用スタッフサックに収納し楽々と持ち運ぶことができる。あまりに調子がいいのでキャンプ以外のフィールドや家の中でも時々使っているほどだ。これが今のところの僕が選ぶ「暫定1位の究極のキャンプチェア」だ。 


hirock

アパレルブランド「A BATHING APE®」のグラフィックデザインを経て2011年独立。表現の場を選ばないメディアクリエイターとしてのキャリアをスタート。ファッション誌GRINDでの連載をはじめメディア各方面にてグッドデザインアイテム、最新のガジェットを紹介。著書に『I LOVE FND ボクがコレを選ぶ理由』。

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