実相寺昭雄のウルトラマン

花の帰宅部にゲスト出演してくれたANIさんは、子供の頃のオリジナルの仮面ライダーを見るのが寝る前の日課だと言っていたが、僕は、ウルトラマンを見るのが日課だ。なんとAmazonビデオでシリーズ全てを見ることができる。

NIGO®さんの言葉を借りれば「未来は過去にある」というか、SF好きやスターウォーズに熱狂する自分の原点はここにあると言っていい。

子供の頃に相当熱中して見ていたものだが、あらためて見てみるとその記憶は無いに等しい。あれ?こんなだったっけ?と次々に新しい発見と出逢うことになる。ひとつ言えるのは、今から50年も前の1966年によくもまぁこれだけのものを作ったなぁと感動する。ウルトラマンや怪獣のデザイン、設定など、もうすでに一話目から完成されている。

これがウルトラマン初登場のシーン。

唯一のしゃべりのシーンなんだけど、子供がやる宇宙人の声。ワレワレハ...的な。笑

最初は、ハヤタ隊員が変身してなるわけじゃなかったんだなぁ。

あることがきっかけで、、、


バルタン星人の登場シーン。

かなりサイケデリック。


大人になって見直してみて新事実を毎日学習しているのだけれど、回ごとに監督が違うというのも大人になって知ったこと。子供のころはその微妙な演出の違いにまったく気づいてなかった。ウルトラマン作品のメガホンをとった監督は何人かいるが中でも僕が好きなのは実相寺昭雄監督だ。一言で言えば、狂ってる。実相寺作品を子供だけのものとしておくのは勿体ない。最大の特徴はカメラワーク。ミラーの反射やとんでもないアングルからの構図、ナメてナメてナメまくる攻めショットだ。それから実相寺監督が演出するウルトラマンはスペシウム光線などの光線系の武器を使わない。地球人の一方的な都合だけで怪獣を倒すことの是非をテーマに掲げる等、他の監督の演出とは一線を画している。逸話もかなり多い監督なのでそのへんはウィキペディアで確認してもらえればと思う。


シリーズ中、実相寺監督が演出したのは以下の通り。


第14話「真珠貝防衛指令」 

ガマクジラに襲われる男に盟友・寺田農が出演している。実相寺はこのとき、襲われる演技の動きをミリ単位で要求し、寺田を困惑させた。 ガマクジラのデザインコンセプトで「食事時の放送では吐気を催すほどのいやらしさで、抗議の電話が殺到という反響を狙っていた」が、出来上がったぬいぐるみは愛嬌のあるもので絶望したという。ただし、晩年には、「『あれで正しかった』と恥じ入っていた」とも伝えられる。 


第15話「恐怖の宇宙線」 

劇中でガヴァドンAが姿を消す場面は、特撮パートでは夕焼けになっているのに実写パートでは白昼晴天になっている。これは「完全に演出ミスだった」と実相寺は後に述べていて、日頃特撮班に要求の多い実相寺だけに、このときは特撮班から散々嫌味を言われたという。ドラマの最後には子供たちに「ウルトラマンのバカヤロー」との台詞を吐かせている。 


第22話「地上破壊工作」 

本作品の脚本は、クレジット上では佐々木守となっているが、実際は実相寺の脚本。 実相寺作品ならではの独特なカメラワークによるモノクロ撮影の地底世界(ロケ地は代々木体育館)、暗闇を生かした地底怪獣テレスドンとの夜戦シーンなど、後の実相寺作品の萌芽が見られる。 演出する際にジャン=リュック・ゴダール監督の映画『アルファヴィル』を意識し、特撮を減らしたSFドラマを意図して「特撮班との間でちょっとしたトラブルになった」という。だが「結果は似ても似つかないものとなり、方法盗用の汚名も着ずに済んだ」と後年に自嘲気味に回想している。 


第23話「故郷は地球」 

大国の犠牲になる人間の悲劇を描いたテーマ性を考慮してか、奇をてらった演出は抑えられている。国連から派遣された特使が科学特捜隊にジャミラ抹殺の指令を下す場面は、泊り込みの地方ロケまで敢行したが、出来上がった映像は暗くて何処で撮られたのか判別できず、近所の空き地で撮ったのではないかと誤解されたという。実相寺は「ウルトラマン」全体を語って、「ぼくはウルトラマンに対する共感というものはなかった。ぼくはむしろジャミラの側だった」とのちに述べている。また実相寺はこの作品を大変気に入り、シーン一つ一つを拘って演出したために収録時間が尺を超え、泣く泣くカットする事態となり、「肩の力が入りすぎて台本の良さを殺してしまった」と後悔の念を述懐している。 


第34話「空の贈り物」 

本作品では、食事中のハヤタ隊員が作戦室を飛び出した後、持っていたスプーンをベーターカプセルと取り違えたまま変身しようとしたシーンが有名だが、これは撮影後に円谷特技プロ内部で問題になった。 この演出に噛み付いたのは、黒澤明の下で長年助監督を務めてきた野長瀬三摩地。当時、TBSから出向という形で演出をしていた実相寺とはキャリア等の面で相当な開きがある。金城哲夫に説得された野長瀬は渋々ながら、それを聞き入れたようである。今でこそ、名監督のほまれ高い実相寺であるが、その自伝的小説『星の林に月の舟』やその映像化作品に見られるように、その演出はあちらこちらで問題・軋轢を生んでいたようである。 野長瀬監督は一方で実相寺の演出に刺激を受け、レフ板を使わず逆光で撮るなどの手法を自らも採り入れている。佐々木守と組んだこの「空の贈り物」ではウルトラマンが劇中初めて二回変身するが、野長瀬監督は「きたねえ奴らだ、二回変身させれば面白いに決まってる、やられた」と感服していたという。 スプーンでの変身シーンは、現在でも『ケロロ軍曹』や『おねがいマイメロディ』などのアニメでパロディ化されるなど、有名なシーンの一つとなっている。また、ハヤタのフィギュア化の際に、ベーターカプセルとスプーンの両方が付属したこともある。 また後に『ウルトラマンマックス』で、かつてハヤタ隊員役だった黒部進によるセルフパロディも登場した。 


第35話「怪獣墓場」 

怪獣を仏式で供養し、戒名までつけさせている。本編での怪獣シーボーズのコミカルな演出に対しては、「怪獣に人間のようなアクションをさせるべきではない」と怒り、高野宏一特技監督と揉めた。実相寺は怪獣が本当に倒すべき存在なのかを問う重いテーマなのに特撮班がコミカルな特撮演出をしたことに、普段から彼らに難題を言ってきた自分に対する嫌がらせではと不満を持っていたという。



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hirock

アパレルブランド「A BATHING APE®」のグラフィックデザインを経て2011年独立。表現の場を選ばないメディアクリエイターとしてのキャリアをスタート。ファッション誌GRINDでの連載をはじめメディア各方面にてグッドデザインアイテム、最新のガジェットを紹介。著書に『I LOVE FND ボクがコレを選ぶ理由』。

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