対談コラム「大人になるってそういうこと?」かせきさいだぁ × JUN WATANABE  Vol.1:プラモデルの話



先日、HIVISIONメンバーのひとりJUNさんからこんなお誘いがあった。


「今度、ミュージシャンの“かせきさいだぁ”さんに会うんだけど、稲崎くんもいっしょに来る?」


ぼくは高校生の頃、毎日のようにかせきさいだぁを聞いていた時期があった。20年経ったいまでも歌詞を暗記しているし、彼の名曲「じゃっ夏なんで」とKool & The Gangの「Summer Madness」は、ぼくの夏には欠かせない定番ソングになっている。


事の発端はこうだ。


JUNさんはデザイナーとして活躍する一方、無類のラジコン好き、タミヤ好き、そしてプラモデル好きとして知られている。そんなJUNさんは、その昔、ある雑誌に登場していたかせきさいだぁ氏に影響を受けていたという。


それから15年以上が経ち、先日行われた「いとうせいこうフェス」で、JUNさんは初めてかせきさいだぁご本人と対面。そのときは挨拶程度だったそうだが、後日あらためて会うことになり、そこに「稲崎くんも来る?」ということになったのだ。なんとも、ありがたい話である。


今回は、そんな2人の話をぼくがひとり占めするのも申し訳ないと思い、HIVISIONの読者に少しだけおすそわけすることにした。


オチもテーマもないまま、少年のようなおじさんたちが繰り広げる、ゆるく、テキトーな会話の数々。どこか90年代の香りを漂わせながら、全3回に分けてお届けします。

かせきさいだぁ:‘95年にインディーズ盤『かせきさいだぁ』、翌年メジャー盤『かせきさいだぁ』を発表。音楽以外でも4コマ漫画『ハグトン』を’01年から描き続け、今ではハグトンを題材にしたアート活動にまで表現の場を拡げている。 ‘11年、2ndアルバムリリースから13年ぶりとなる待望の3rdアルバム『SOUND BURGER PLANET』、‘12年9月には矢継ぎ早に4thアルバム『ミスターシティポップ』をリリース。‘13年8月には全曲アニソンカバーアルバム『かせきさいだぁのアニソング!! バケイション!』をリリースと精力的に活動中。 現在4年振りのオリジナルアルバムをレコーディング中!

 OFFICIAL WEBSITE : http://www.kasekicider.com


JUN WATANABE:クリエイティブディレクター/グラフィックデザイナー。ファッション、スニーカーなど中心に国内外の様々な企業・ブランドとコラボレーションを行なっている。'13年、これまでの仕事を集めた作品集「Display case by JUN WATANABE」を発行。毎年アートエキシビションも定期的に行うなど精力的に活動している。また模型メーカー「タミヤ」とのアパレルに特化したコラボレーションライン「TAMIYA by JUN WATANABE」を展開し、話題を集めている。

OFFICIAL WEBSITE:http://www.junwatanabe.jp


vol.1:「プラモデルの話」

vol.2:「音楽の話」

vol.3:「ナムコ、バンダイの話」



vol.1:「プラモデルの話」


JUN WATANABE(以下、JUN):さいだぁさんのことはずっと気になっていたのですが、なかなかお会いする機会がなく。それで、この前の「いとうせいこうフェス」のときにお声がけさせてもらって……。


かせきさいだぁ(以下、さいだぁ):その前からインスタでは知り合いでしたが、お会いするのは初めてですよね。


JUN:そうなんです。というか、ぼくのことはどうやって知ったんですか?


さいだぁ:たぶん、タミヤのモノクロTシャツだったかな。


JUN:ああ、はいはい。


さいだぁ:最初、タミヤTシャツを買おうとしたら、まわりから「それゴールデンボンバーが着てるよ」っていわれて、「えっ!? なんでゴールデンボンバーがタミヤなの?」みたいになって(笑)。


JUN:(笑)。


さいだぁ:でも、デザインがすごくかっこいいし、どこで買えるんだろうって調べてたら、JUNくんの名前が出てきて。それでインスタをフォローしはじめたような気がします。

JUN:その話、かなりうれしいですね! というのも、タミヤに関わるようになったきっかけって、もとをたどるとさいだぁさんだったりするんです。


さいだぁ:ええ、ぼくが?


JUN:ぼく、最初にさいだぁさんを知ったのが、雑誌のリラックスだったんです。


さいだぁ:ああ、リラックス。もう、15年以上も前じゃないかな。

※(JUN氏私物の雑誌relax。ファッション・カルチャーを中心に扱い、今だに多くのrelaxファンがいる。2002年4月号にて、10ページに渡りかせきさいだぁ氏がタミヤを取材していた)


JUN:ぼくも、いまでこそタミヤとコラボ商品を出してたりしますが、当時はデザイナーになったばかりで、リラックスを読みながら、「ああ、さいだあさん、タミヤの本社に行ってる。いいなぁ、うらやましいなぁ」って。


さいだぁ:あれはけっこうぼんやりした話で、「ちょっと取材につきあいません?」みたいな感じで行ったら「さいだぁさん、インタビューします?」みたいになって。サブカル界でプラモをつくってる人って、そんなにいないみたいで。


JUN:うーん、そうなんですね。プラモ友達とかっていないんですか?


さいだぁ:いないですね。あえてあげるなら、ラーメンズの仁くんぐらい。あの人は完成したプラモに自分の顔をつけちゃったりするけど。


JUN:ああ、取説どおりにいかないタイプなんですね(笑)


さいだぁ:いかない(笑)。


JUN:ぼくの中のさいだぁさんって、プラモデルのイメージがすごくあって、ぼくが「タミヤってかっこいい」って再び思うようになったきっかけも、リラックスのその記事なんです。


さいだぁ:ありがとうございます。うれしいですね。


JUN:ぼくの場合、小学生の時にタミヤと出会うんですけど、中学生になるとタミヤが好きなことを、どこか封印してたんですよね。


さいだぁ:そうですよね。ぼくも、そういう話しないですから。中学ぐらいまでは友達としてましたけど、高校ではいっさいしなかった。


JUN:だから、そのリラックスの記事を見たときビックリしたんです。「あ、大人なのにタミヤ好きがいる」って。


さいだぁ:(笑)。


JUN:でも、それがすごくかっこよく思えて、そこからタミヤ好きを堂々といえるようになりましたね。


さいだぁ:ぼくがデビューした95年ぐらいって、スターウォーズはかっこいいけど、和物はあまりかっこよくないという時代だったんです。サブカルのオシャレ層はスターウォーズで、みうらじゅんさんのような人は怪獣や特撮ものでしたから。


JUN:ああ、そうでしたよね。


さいだぁ:そういう時代で、ぼくはプラモがずっと好きだったから、なんとなくそういう担当になって。当時、ASAYANって雑誌でMGザク作って、マイケルジャクソンのポーズで横たわった僕の前にそのザクを立たせたり(笑)。


JUN:めっちゃおもしろそう(笑)。

さいだぁ:当時のASAYANでもガンダム好き、アニメ好きを公言する人って少なかったかも。いまは、誰でもガンダム好きって言える世の中になりましたけど。


JUN:さいだぁさんは静岡の出身ですよね? 静岡といえば模型の町。


さいだぁ:そう、模型の町。もうね、町にプラモ屋がめっちゃ多いんですよ。海外の輸入物も普通に売ってますね。


JUN:けっこう高くないですか? 海外のプラモって。


さいだぁ:高いですね。でも、そういうもので外国の雰囲気を味わってましたね。例えば、チェコスロバキアでつくられたソ連の戦車プラモとか。横からパカって開けるキャラメルボックスで、箱を振るとパーツが全部外れてて、じゃらじゃら音がするやつ。

JUN:ランナーにくっついてないんだ。


さいだぁ:小さなプラモ屋の奥のほうで見つけて、もう即買いでしたね。ほとんどパズル状態だから組み立ても大変でしたけど……。というか、さっきからプラモの話ばっかですが、こんな感じでいいの?


JUN:あ、全然気にしないでください(笑)。


(つづく)

稲崎吾郎

神戸生まれ。アート/インテリア/ライフスタイルを中心に様々なメディアで執筆活動を続けるフリーランスライター。数十社以上のメディアでの企画/編集/執筆にかかわり、オウンドメディアや記事広告で制作したタイアップ記事は数百本以上。幅広いフィールドで執筆活動を続けている。